(DVD製品付録冊子より 2)

“ダンスを映像でどう振り付けるか? ビデオダンスという表現方法“

文:監督:飯名尚人


ダンスと音楽というのは、立体的で抽象的な表現形態を持っています。曖昧で説明のつかない「何か」を共有し共感するには、平面の映像よりもダンスや音楽の方がフィジカルに伝わるかもしれない。しかしながら映像だからできるダンスと音楽の表現というのも確実にあって、「多分野の技法と理論のミックス」をすることで新しい感覚の表現スタイルが創造できるような気がします。

「ビデオダンス」というのは、記録映像ではなく、またダンサーのブロモーションピデオでもなく、ダンス映画、あるいは、映像で表現するダンス作品、というようなものです。ハリウッドのミュージカル映画が魅せるダンスとストーリーのコラボレーションを想像してください。あの世界を「コンテンポラリーダンス」の感覚でやったらどうなるか、それか今の「ビデオダンス」というジャンルの形成でもあります。

このDVDに収められた2作品のビデオダンス化、という企画で、なんと幸運にも監督に抜擢され、制作を始めました。この2作品はすでに何度も舞台作品として上演されているため、振付家と音楽家の関係でしか分かりえない世界観があって、そこに「完全アウェイ状態」で後から監督として参加し、彼らに新たな演出を加える。この役割を分かりやすく言えば、音楽でいう「リミックスJrアレンジ」という作業です。しかし映像作品として完成させるには、價自身の作家性を映像に残さなければ、「DANCEXMUSICXMEDIA」というコラボレーションになりません。ダンスを映像でどう演出するか、どう振り付け直すか。その作業かビデオダンスの醍醐味でもあり、難問でもあるのです。

ビデオダンスの出現によって、振付家やダンサーは表現の場が広がったはずです。振付家か監督となって映画を作ることもできるし、舞台では出来ない表現か映像の中で実現します。映像作家としての僕の課題は「何か伝えたいのか」という映像におけるストーリーの機能をダンス的に解釈し、「映像だから出来るダンスの表現」を創造していきたいです。

2009年4月



飯名尚人プロフィール

映像作家、演出家ダンスとデジタルテクノロジーの硝音を目指し、メディア・パフォーマンスのジャンルでワークショップ、レクチャー、パフォーマンスを行っている。ベルリン拠点のメディアハフォーマンスユニット「ポストシアター」、オハッド・ナハリン(バットシェバ舞踊団芸術監督)のメソッド「ガガ」を日本で広める「GAGA/JAPAN」のほか「マムシュカ東京」「国際ダンス映像祭」など多数の企画を手がける。東京造形大学、名古屋学芸大字非常勤講師、座・肩円寺「劇場創造アカデミー」講師