STORY

ものがたり

舞台は、西松布詠の江戸唄、三味線の演奏から始まる。お座敷芸のようなおしゃべりと演奏。一服煙草を吸うと、煙の世界へ。幻想世界に入り込む。

男との縁を切ってくれるお寺、縁切寺に逃げて来た女。
逃げて来た女は、男に騙されヒドい目にあった女か、それとも、男を騙して逃げている女なのか、あるいは、吉原の花魁・高尾太夫の亡霊か、生まれ変わりか・・・ラブストーリーとサスペンスが入り乱れていく。

作品解説

タイトル「アジール」は、歴史的・社会的な概念で「聖域」「避難所」などを意味し、聖地である社寺や教会も含むという。江戸時代、離縁したくてもできない弱い立場の妻を救済し、夫と離縁させてくれる「駆け込み寺」として縁切寺=アジールが存在しました。離縁するための「三行半」の書き方や作法がある一方、江戸の女性は想像とは違って、どうも弱い立場だけではなかったようです。男と別れたいが為に、したたかに縁切寺を利用したという史実もあり、どこか現代に通ずる女性の恋愛観も見え隠れします。

今回の音楽家である西松布咏さんの演奏する三味線や小唄は、今でこそ格式高い伝統芸能ですが、江戸時代当初は大衆的な流行歌・ポップソングとして親しまれていました。この作品は、偶然引き寄せられた恋愛の避難所「アジール」としての縁切寺をモチーフに、いつの世でも普遍的な大衆の心を摑む「恋愛」を作品のテーマに据えました。
現代人にとって「アジール」は、どこを意味するのでしょうか。自らを守ってくれ浄化される聖域―アジール。恋愛のためだけでなく、いろんな意味の「アジール」を私たち現代人は、求めているように思います。







これまでの公演|2013年




これまでの公演|2011年